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創造について(懐疑的な話です)

ヤコブ 1:18は創造信仰を背景にもっている。
宗教を信仰していない僕には神による世界創造を信じるという感覚はなかなか理解できない。
創世記を読んでも、信仰者とはまるで違った解釈をしてしまう。

「塵にすぎないお前は塵に返る」(創世 3:19)というのは古代人の観察が生きている気がします。
死んだ人は塵に返ってしまう。ならば、人は塵から生まれたのだろう。では、一体誰が人を塵から作ったのか。
そう問うていって生まれた伝承のように思えます。
つまり、古代人なりの科学的な推測が述べられているのだろうと。

「これをこそ、女(イシャー)と呼ぼう/まさに、男(イシュ)から取られたものだから」(創世 2:23)などを読むと、言語からイメージを膨らませて女性が男性からとられたものから生まれたと解釈しているようです。

「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました」(創世 3:12)
「蛇がだましたので、食べてしまいました」(創世 3:13)
この二つの言い訳も面白い。アダムは女のせいにして(つまりそれを与えたのはあなたじゃないか、とヤハウェの責任にしてます)、女の方は蛇のせいにします。

後の方では弟アベルを殺したカインが「知りません。わたしは弟の番人でしょうか」(創世 4:9)と言ったりします。
創世記は結構ヤハウェに堂々と口答えしますね。創造信仰ってこういうのでいいのでしょうか。
ヤハウェは恐るべき神だと描かれもしますが、このあたりヤハウェはむしろ寛容に接してます。

エバをだましたという蛇ですが、微妙に嘘は言ってないですよね。
ヤハウェは「食べると必ず死んでしまう」(創世 2:17)と言いますが、(すぐには)死にはしない。蛇はその点で大して嘘は言ってない。
この物語は、人間と蛇の間に敵対関係が生じる原因譚になってます。
蛇は、農耕上の害獣だったのでしょうか。嫌われていたのでしょう。

裸を恥だと思うことについてもこの伝承から説明されているようです。
マックス・ウェーバーなどは、農耕にともなう豊穣を祈願するための性的オルギアが関連しているのではないかと論じていたと思います。ヤハウィストはそういったオルギアと競合していて、それを嫌ったのだろうということです。

創世記の冒頭は、無から何か生み出したというよりは、混沌へ神が呼びかけることで秩序が生まれてくるというイメージですね。エヌマ・エリシュに近い。

7日で神が世界を創り上げる。安息日の起源を説明しており、またそこを耕すために人を作ってます(創世 2:15)。
これらは農耕の神話ですね。遊牧民の神話というよりも。
安息日の強調は、たぶん捕囚の影響でしょうか。
つまり人が塵から生まれたというような素朴なイメージから生まれたのとは違って、歴史の影響を受けたものに見えます。

 (アモス 9:7)
 イスラエルの人々よ。わたしにとってお前たちは
 クシュの人々と変わりがないではないかと
 主は言われる。わたしはイスラエルをエジプトの地から
 ペリシテ人をカフトルから
 アラム人をキルから、導き上ったではないか。

ヤハウェはイスラエルの人々だけの神ではなく、他民族までも支配している。
アモスの予言はかなり古い。創世記より古い。世界の創造した神としての性質はこのあたりに由来するのでしょう。
アモスが「彼らが正しい者を金で 貧しい者を靴一足の値で売ったからだ。彼らは弱い者の頭を地の塵に踏みつけ 悩む者の道を曲げている」(2:6-7)と預言しているとき、恐るべき神の怒りを語るとき、その矛先は富者・支配者に向いている。
神の恐ろしさというのは、貧しい者の救いだった。
アモスは、現実を見ている感じがするんですよね。人々が苦しんでいる現実を。

そして、現代人が創造信仰を語るときには、すでに恐ろしい神というものが救いであるという感覚は遠く、また人々が苦しんでいるという現実というものから離れて「信仰」という行為が考えられているように感じます。
また古代人が、古代人なりに科学的に考えたであろうこととして理解するのではなく、これは信仰して鵜呑みにするべき世界観として捉えられている感じがします。
ですが果たして古代人は科学に対して頑迷な態度をとるべくして創世記を書いたつもりなのか、ちょっと疑問。

元来はもっとはるかに素朴に、世界の不思議さを説明したような信仰なのではないかと思えるのですが。
創世記を読むと、なにやら色々加わっているような印象を受けてしまってどうも素直に読めませんね。

グズグズ書いてますが、結局創造信仰とはどういうものなのか、踏み込んで考えれてはいないのです。

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