« ヤコブの手紙の貧困の問題2 | トップページ | 音楽聴いて慣れるのもいいか 2 »

加藤周一氏のインタビュー

youtubeで加藤周一氏のインタビューの動画を見つけた。
このインタビューは昔に別の番組で見たことがある。

インタビューのなかで加藤氏は孔子の話をします。
道で家畜の牛が酷く鞭打たれているのを見て、孔子がそれを止めようとする。
しかし、彼の弟子は「その牛一頭を救ったところでしょうがないじゃないか」と諭そうとする。
たしかに孔子はどう頑張ったところですべての牛を救ってやることはできない。
「だが、この牛は私の前を通っているからだ」と孔子は言う。

加藤氏は語っています。
「それはね、第一歩ですよ、自分の前を通る牛を本当に親身にかわいそうだと思わなければ、
それはただ統計的な数字についてしゃべってもしょうがないのだということですよ。
はじめに一人の人の命が大事じゃない人にとっては、ただ抽象的に何百万の人の命のことをしゃべっても、
それはただ言葉だけであって、ほんとうに行動につながっていない。
行動につながるのには、それは情熱がなければ、その情熱の引き金はやはりその一人の人間だ」

このインタビューの趣旨は、ヤコブの手紙の著者の考えに、部分的に近いものを語っているように思えます。
行動というのは、情熱の問題だということです。
すべての牛を救うことができるか否か。いや、不可能だといったような議論は、つまりただ抽象的に統計についてしゃべっているだけであって、つまり最初の一頭を救いたいという情熱が欠けてしまっている。
その情熱が冷めてしまっていると、ただやらなければならないという義務とかルールについて語っているだけになってしまう。
ヤコブの手紙の著者が、貧しい兄弟を助けることを書いているのを、それが世界中の貧民を救うというような重苦しい義務について語っているように読んでしまうならば、孔子の弟子のエピソードと似たような解釈をしてしまっているのかも知れません。

加藤周一氏の「日本文学史序説」は凄い本だった。
芸術や文学を巧い切り口で評論していて面白いです。
加藤氏の文章は、M.ウェーバーの「古代ユダヤ教」にどこか文体が似ている気がして、そこが格好いいのです。

|

« ヤコブの手紙の貧困の問題2 | トップページ | 音楽聴いて慣れるのもいいか 2 »

趣味」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 加藤周一氏のインタビュー:

« ヤコブの手紙の貧困の問題2 | トップページ | 音楽聴いて慣れるのもいいか 2 »